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モニターと紙ではなぜ色が変わるのか?印刷物でイメージ通りの色を出す

  • 2025/06/11
  • WEB

ウェブサイトやスマートフォンで見た写真の色と、実際に印刷されたチラシの色が「なんか違うな」と感じたことはありませんか?これはデジタル機器と印刷物で、色の表現方法が根本的に違うから起こる現象です。

私たち画遊では、お客様からいただいたデータを印刷する機会が非常に多くあります。その際、RGBモードで作られたデータは一度CMYKに変換してから印刷します。この変換の際に、画面上でとても鮮やかに見えていた色が、CMYKにすると、くすんだように見えてしまうことがあります。お客様が意図した色と違うのではないかと、私たちもいつも心配になります。

この記事では、色の基本である「CMYK」と「RGB」について、その仕組みから、なぜ使い分けが必要なのか、そして印刷物を作る際の注意点までご紹介します。データ作成時の参考にしていただけると幸いです。

CMYKとRGB:色の作り方が全然違う

CMYKとRGBは、それぞれ全く異なる方法で色を作っています。光で絵を描くのと、絵の具で絵を描くような違いがあります。

RGB:光で色を作る「混ぜると明るくなる色」

RGBは、パソコンのモニターやスマートフォンの画面、テレビのように「光を出す」デジタル機器で使われる色の作り方です。「Red(赤)」「Green(緑)」「Blue(青)」の3つの光を混ぜ合わせることで色を作ります。

  • 光を混ぜるほど色が明るくなり、全部混ぜると「」になります。光がない状態が「黒」です。
  • 画面上で見るウェブサイト、デジタル広告、写真、動画などはすべてRGBで作られています。
  • RGBはとても鮮やかな色や、蛍光色に近い色を表現するのが得意です。

CMYK:インクで色を作る「混ぜると暗くなる色」

CMYKは、本やチラシ、名刺、ポスターなど「インクを使って紙に印刷する」時に使われる色の作り方です。「Cyan(シアン/青緑)」「Magenta(マゼンタ/赤紫)」「Yellow(イエロー/黄)」の3色に「Key Plate(キープレート/黒)」を加えた4色のインクを混ぜ合わせて色を作ります。

  • インクや絵の具のように、色を混ぜるほど光を吸収して暗くなり、最終的には「」に近づきます。
  • CMYKは、印刷物が得意とする、しっかりとした落ち着いた色を表現するのに向いています。理論上はCMYを混ぜると黒になりますが、インクの特性上、純粋な黒が出にくいため、きれいな黒を出すために「K(黒)」が追加されています。

なぜ、デジタルと印刷で色のモードが違うの?

CMYKとRGBがそれぞれ異なる用途で使われるのは、それぞれの「色の作り方」と、使われる「媒体の性質」が違うからです。

RGBが画面表示に向いている理由

デジタルディスプレイは、光を直接出して色を表現します。人間の目は光の三原色(赤・緑・青)を感じ取るので、RGBは人間の見た目に近い特性を持っています。光を混ぜて色を作るので、CMYKでは出せないような、とても明るく鮮やかな色を表現できるのが強みです。

CMYKが印刷物に向いている理由

印刷物は、それ自体が光を出しません。紙やインクが光を吸収したり反射したりすることで色を見せているので、CMYKの「混ぜると暗くなる」という原理が適しています。印刷機はCMYKのインクを紙に重ねて色を再現します。また、CMYKの4色で効率よく、たくさんの印刷物を作ることができますし、K(黒)インクはきれいな黒を出すだけでなく、他のインクを節約する役割もあります。

RGBからCMYKに変換すると「色がくすむ」のはなぜ?

RGBとCMYKでは、表現できる色の範囲(色域といいます)が異なります。RGBの方が表現できる色の範囲が広いため、RGBで表現できる鮮やかな色が、CMYKでは再現できないことがあります。

特に、青、緑、ピンク、水色、オレンジなどの鮮やかな色は、CMYKに変換すると、彩度が落ちてくすんだ印象になることが多いです。これは、RGBの「光の鮮やかさ」をインクで再現するには限界があるからです。

また、RGBの方が明るさのメリハリが強く表現される傾向があり、CMYKでは全体的に暗く、のっぺりとした印象になることもあります。画面上で「光っている」ように見える蛍光色なども、CMYKインクでは物理的に再現できません。

このような色の変化は、デザイナーが意図した色と、実際に印刷された物の色にギャップを生む原因になります。これを避けるためには、印刷物を作る場合は、最初からCMYKでデザインを始めるか、早い段階でCMYKでの見え方を確認する「ソフトプルーフ」(画面上で印刷の色をシミュレーションすること)を行うことがとても大切です。

もしウェブと印刷の両方で同じデザインを使いたい場合は、後で大きな修正を避けるため、常にCMYKでデザインを始めて、その後RGBに変換するという流れがおすすめです。

色の違いイメージ画像

印刷物を作る時に知っておきたい大切なこと

高品質な印刷物を作るためには、いくつかのポイントに注意が必要です。

1. 適切な色のモードを選び、変換する

印刷会社にデータを渡す際は、基本的にCMYKモードでデータを作る必要があります。RGBデータをそのまま送ってしまうと、印刷会社で自動的にCMYKに変換され、予期せぬ色変化が起こる可能性が高いです。そのため、デザイナー自身が事前にCMYKに変換して、色の確認や調整をすることが重要です。特に鮮やかな色がくすむことに注意しましょう。完全に同じ色を再現するのは難しいので、許容範囲での「近い色」を目指します。

2. カラープロファイル(色の設定ルール)を正しく使う

カラープロファイル(ICCプロファイル)は、パソコンやプリンターなどの機器が、色をどのように表現するかというルールを決めるものです。これを使うことで、異なる環境でも色の見え方をできるだけ揃えることができます。

  • ウェブや画面表示には「sRGB」というプロファイルがよく使われます。
  • 印刷目的には、sRGBよりも広い色域を持つ「Adobe RGB (1998)」が推奨されることもあります。
  • 日本国内の印刷では「Japan Color 2001 Coated」というCMYKプロファイルが一般的です。

一番確実なのは、データを送る印刷会社が推奨するプロファイルを使うことです。モニターの色の調整(モニターキャリブレーション)や、適切なプロファイルの選択、画面での色のシミュレーション(ソフトプルーフ)など、一連の「カラーマネジメント」を行うことで、正確な色再現を目指すことができます。

3. 画像の「解像度」をしっかり設定する

解像度は、画像がどれくらい緻密かを示すもので、印刷では主に「dpi(dots per inch/ドットパーインチ)」という単位が使われます。これは1インチあたりにどれだけの点が集まっているかを表します。

  • 一般的なカラー印刷では、350dpiが推奨されます。
  • ポスターのように離れて見る大きな印刷物では、見る距離によって200dpi程度でも十分な場合があります。

画像をあまりにも高解像度にしても、人間の目や印刷機の限界から、仕上がりの違いはほとんど分かりませんし、ファイルサイズが大きくなりすぎます。逆に、推奨解像度より低いと、印刷した時に画像が粗く見えてしまいます。品質と効率のバランスを考えて設定しましょう。

4. 適切なファイル形式を選ぶ

印刷に適した主なファイル形式には、TIFF、PSD(Photoshopデータ)、PDF、EPS、AI(Illustratorデータ)などがあり、それぞれ高画質を保ったり、レイヤー構造を維持したりする特徴があります。

  • ウェブでよく使うJPEGは、保存を繰り返すと画質が劣化する可能性があります。
  • PNGもウェブ向けの形式で、印刷にはあまり向かない場合が多いです。

これらのウェブ向け形式を安易に印刷に使うと、画質の劣化や印刷エラーのリスクが高まります。

特に、PDF/Xは印刷時のトラブルを防ぐための国際的な標準規格で、安定した出力に適しています。多くの印刷会社がPDF/X-1aまたはPDF/X-4での入稿を推奨しています。ファイル形式は、単にデータを保存する箱ではなく、その構造が印刷の品質や互換性に直接影響することを理解しておきましょう。

5. 色の一貫性を保つための「カラーマネジメント」

モニターと印刷物の色をできるだけ一致させるためには、総合的なカラーマネジメントが欠かせません。

  • モニターキャリブレーション:モニターの色の表示を最適化し、正しい色味を見せるための調整作業です。モニターの色は時間とともに変わるので、定期的な調整(200〜300時間ごと)がおすすめです。これにより、デザインしている段階で実際の印刷に近い色を確認でき、色のズレやクライアントとの認識のズレを防ぎます。
  • プルーフ(試し刷り)
    • ソフトプルーフ:キャリブレーションされたモニター上で、印刷結果をシミュレーションすることです。費用や時間をかけずに、印刷前の色味を事前に確認できるので、トラブルを未然に防ぐことができます。
    • ハードプルーフ:実際に紙に印刷された試し刷りのことです。最も正確な確認方法ですが、費用がかかります。ソフトプルーフの精度は、モニターキャリブレーションがどれだけ正確にできているかに大きく左右されます。

6. 「特色(スポットカラー)」の扱い方

特色(スポットカラー)は、CMYKの4色では表現できない、特定の特別な色や、4色全てを使わないシンプルな印刷(例えば2色刷り)で使われる、特別に調合されたインクのことです。

一般的なカラー印刷では、特色の設定に直接対応していない場合があります。特色のデータはCMYKに変換する必要があり、その際に色味が変わる可能性があります。一部の印刷会社ではPhotoshopデータの特色印刷に対応していないこともあるため、事前に印刷会社に確認が必要です。

また、「オーバープリント」設定にも注意が必要です。これは、下の色に重ねて印刷する設定で、意図しない設定になっていると印刷物の色に予期せぬ影響を与える可能性があります。デザインソフトのプレビュー機能で必ず確認するようにしましょう。特色は、目を引く表現手段ですが、CMYK印刷の仕組みとの互換性やオーバープリント設定といった技術的な側面で、思わぬ落とし穴があることも理解しておく必要があります。

まとめ

デジタル画面で見るRGBと、印刷物で使われるCMYKは、色の作り方も表現できる色の範囲も全く異なります。特にRGBからCMYKへの変換時に、色の範囲の違いから色がくすんだり変化したりすることは、印刷物を作る上で大きな課題です。

高品質な印刷物を実現するためには、適切な色のモードとプロファイルの選択、画像解像度の設定、ファイル形式の選び方、カラーマネジメント(モニター調整や画面での試し見)、そして特色やオーバープリント設定への注意など、ベストな方法を守ることが不可欠です。

これらの知識と対策を講じることで、デジタルでイメージした色を印刷物としてできる限り忠実に再現し、「思っていた色と違う!」という事態を防ぐことができます。ぜひ、あなたのデザイン制作に役立ててください。

デジタルと印刷の色の違いについて、より具体的なイメージを持っていただけたでしょうか?画遊では、お客様の「こんな色にしたい!」というご要望に、プロの視点から最適な印刷方法や色調整のアドバイスを行っています。金沢市や野々市市で印刷物についてお困りでしたら、お気軽にご相談ください。

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